
想いが孵化して、贈り物という形になる。
私の元に小さな贈り物が届きました。
その包みをひらくと、美しい月の刺繍と1冊の本と手紙でした。
しばらく床に座り込み、月と光の帯が漂う夜の世界を眺めていました。
「これは、あてもなく、刺したい時にひっぱりだしてつぶつぶと仕上げた刺繍です。
色の境界がないように、溶け合うようなイメージだけで進めてきたんだけど、
最後が近くなった時に、左上に月のようなものがぼわっと出てきて、その時
『あ、ともちゃんに送ろう』と思ったの。」
東京にいた頃、彼女と彼女の小さな女の子は私のヨガに通ってくれていました。
この刺繍を小さな女の子もとても気に入っていたけれど
彼女がこれは人にあげるんだよって言ったら、
あげるならともちゃんがいいと言うから
やっぱりそうなんだ、と私に贈ってくれたそう。
そのやりとりに懐かしい感じがして、涙がこぼれました。
心にある構図が、電波のような波を放って
美しい模様をこの世界に描き出し、
私のベッドサイドでいつも月を浮かべる。
手作りのものや手書きのものが示す温度に、いつも惹かれます。
1冊のやわらかい本。
写真家、齋藤陽道さんの「それでも それでも それでも」。
生まれつき耳が聞こえない彼ですが、聴こえない音を光にして映し、
心の音をフォントに落として言葉を繋げているように感じる。
外側と内側の世界を繋いで生きている人です。
バスタブにたっぷりのお湯を張り、浮かびながら捲ると
言葉になる前のざわめきがお湯の中に流れ出す。
裏表紙の柔らかい紙の小さな虹が、この本を読みながら
私を思い出してくれたという彼女と重なります。
私にとって、風を家に招いたり、朝の月と太陽を見つけることは
信仰に似ているような気がします。
そんな日常の中にある祈りのようなものを、贈り物をするとき
そっと込められたらいい。
燻んだものを、透明にしてくれるお守りのような贈り物。
今日は新月です。
