
ハワイに訪れた人たちから、繰り返し聴く言葉があります。
「ここに来ると、気づかないままでいた心の声が聴こえたり、自分という存在が浮き彫りになる。」
私にはそれが、歌のように聴こえたり、苦しみのさざ波に見えたりします。
滞在の初めの頃に如実に現れる、個である「自分」という輪郭。
ハワイじゃなくても、立つ場が変われば、新たに知る世界や自分の側面。
でも溶岩から生まれたハワイでは更に、深い場所に眠っていたものが、
目に見える次元へ、明らかに引き出されるといいます。
心に在るものも、外側の世界へ転送されるスピードが速い。
熱や涙、感情や夢や痛み、あらゆる現象となってこの世界で「見る」ことになります。
私はそれをただ見つめ、心や呼吸や身体の使い方が変わり、
目に映る世界が色を変えていくのを待ちます。
強い光の乱反射や、夜の花が眠る気配を体感するうちに
浄化もインスパイアも進み、ゆっくりと自分の中心と取り巻く宇宙に
リズムが合ってくるのです。
古代のハワイの人々は、内なる声を聴くことで、全てから声が聴こえてくることを
知っていたそうです。
以前、佐藤初女さんとお会いしたことがありました。
森のイスキアで生前、たくさんの人々の命に栄養を注いで下さった、美しい方でした。
本来の自分に戻っていく人たちに触れていると、初女さんの言葉を想い出します。
私たちは迷った時に、休むと考えが浮かんでくるように、
食材も透き通ったら火を止め、味をつけて溶け込ませると、
香りが良く歯ごたえがいいものができます。
多くの料理が休ませることで、味が自然になるのです。
食材をいのちとして受け入れるのです。
『初女さんのお料理』より
人も同じように、足を止め、心を鎮め、取り巻く全てと一体となり
溶け込んだ時に、いのちは深まり、ありのまま立つことができる。
混沌とした瞬間の連続から、全てとの境が消え
心だけになる時間は、美しいコントラストの贈り物なのかもしれない。
夏の旅のはじまりです。
